スポンサーリンク アルプスの美しい町と最初の給油 2016/6/23 2016/06/14~ ドイツ, ■彼女と世界二周目■ 2016年6月14日(火曜日)【ドイツ】 バートテルツ「カンちゃん………カンちゃん…………」「…………ふひー…………むにゃむにゃ…………おはよー………」「カンちゃん、ドア開けるよ。いい?ドア開けていい?」「あ、そうだ!そうだね!はい…………よろしくお願いします!!」寝袋に包まりながらドアを開けた。瞬間、冷気が車内に入ってきてぶるるっと震えた。でもその寒気を吹っ飛ばす光景が目の前に広がっていた。目の前に広がる壮大な山の連なり。山並みを幻想的な雲海が包み、そそりたつ急峻な頂が雲の中から荒々しく天を突いている。山には白い残雪が見られ、氷河らしき巨大な部分もある。あまりの光景に息を呑むとはこのことだった。俺たちなんてところで寝てたんだ。「すっげぇね…………」「すごすぎるね……………」2人でブルブル震えながらも、車のトランクを開けてその光景を独占した。車の中で寝袋に包まりながら目の前にこんな大自然があるってのが、なかなか信じがたい。それくらいスケールがハンパなかった。そしてそんな光景を眺めながら朝ごはんを食べた。スライスしたパンをコンロであぶり、そこにオニオンチーズを塗り、サラミを乗せてかじりつくと、香ばしい甘みが広がって顎の付け根が痛くなった。オリーブをつまみながら目の前に広がるアルプスの山々を2人っきりで眺めた。周りにはただただ自然の静寂だけが俺たちのことを見つめていた。アルプス最高っていうかレンタカー最高で死ぬううううう!!!って叫びながら、さぁ今日も次の町を目指そう。ここから先はもうあの大好きなドイツだ。どこに行っても素敵な町が無数に存在するので、地図を見て適当に選びたい放題。そしてほぼ必ず、地元の人がたくさん歩く賑やかなショッピングストリートがある。日本の地方都市みたいに寂れきったシャッターストリートではなく、本当にどこも活気があるからヨーロッパは路上パフォーマーにとってこれ以上ない聖地だ。今日も快調に田舎道を走っていくんだけど、いつもと違うのは左手にずっとあの壮大な山並みが連なっているところ。もう完全にアルプスの麓だ。ここから先、ドイツとオーストリアとスイスにまたがって広がる大山脈地帯の懐に、どれほど美しい高原の風景が広がっていることか。リアルアルプスの少女ハイジみたいな家族が普通に暮らしてるんだろうなぁ。あの超長いブランコで遊びながら。アルプスの少女ハイジ、まったく見たことないけど。どんなストーリーなんですか?そんな田舎道を走り抜けていくと、やがてバートテルツという町に入ってきた。今日の目的地はまだ100キロくらい先のケンプテンなので、早いところ進まないといけないんだけど、まぁせっかく来たんだし町の中を通って町並みを眺めて行くことにした。緑の多い小さな町の中に入っていき、どこが中心部かなーとウロチョロ回っていると、商店が並ぶ道沿いにすごいものを見つけた。こ、これはあああああああ!!!!!枕。寝具屋さんでセール品の枕見つけました。物価の高いドイツで5ユーロの枕ゲット。600円。しかもちゃんと横長のやつなのでカンちゃんと2人で使えるのもバッチリ。いやー、快適生活が整っていくなぁ。枕ゲットだぜうひょおおう!!とご機嫌でハンドルを切って進んでいくと、目の前にいつもの旧市街の入り口になる塔が立っていた。おお、ここがこのバートテルツの中心部か。どんな町かなーと中に入ってみた。もうなにこれええええええええ!!!!!先進めないしいいいいいいいいいいいい!!!!!塔の下のゲートを越えると、目の前に中世の町並みがぶわーっと広がった。一本道の両側に絵本の中のような家々が並び、石畳の道の真ん中に銅像が立っている。下り坂になっていることで町を見渡せ、そして空がとてもとても綺麗だった。カフェやレストラン、洋服屋さんなど、普通の現代的なお店が入っているその建物を離れて見てみると、壁にキリストの絵画が描かれており、とても特徴的だった。本当に町そのものが美術館という表現がピタリとくる。ベンチに座ってる人の中には、アルプスの民といった感じのドイツの伝統衣装を、普段着で着ている渋すぎるお爺さんもいる。羽根つきのとんがり帽子。人もたくさん歩いており、観光客もちらほらと見られることから、ここがそれなりの観光地なんだとわかった。ミュンヘンからアルプスに向かう人たちが通る宿場町みたいな感じなのかな。田舎の街道にある宿場のどこか素朴な空気が町全体に流れていた。もう、路上決定ですよ。立ち止まらずにはいられませんよ。この町で歌える喜びを噛み締めたい!!全然先に進めねぇ!!!いつもの路面パーキングに2時間、1.5ユーロ、180円で止め、ギターを持って旧市街へ。たくさんの人が歩く美術館みたいな通りにはスーパーマーケットもある。本当にここが当たり前の生活の舞台なんだよなぁ。カフェのテラスでカプチーノを飲む人たち、アウトドアファッションの老夫婦、買い物帰りの家族連れ、とても心が和む。どこからか音が聞こえるなと思ったら、道端で欧米人の女の人が控えめにアルトリコーダーを吹いてバスキングしていた。やっぱりどこの町にも路上パフォーマーはいるもんだ。暖かな日差しの下、カフェに囲まれた通りの真ん中に立ってギターを鳴らすと、両側のおとぎの国の家々に響いてとても気持ちよく響いた。最初はなんだ?なんだ?アジア人が歌ってるぞおい、この町で、って感じで驚いていた人たち。しかしすぐにコインが入り始め、そこからはいつもの調子だ。上品なおじさまおばさま、素敵な家族、余裕でハイジを超えてるレベルの超絶可愛いアルプスの少女たちがブロンドの髪を揺らしてキャッキャとかけまわっている。ぐおおお!!素敵なの!?ただ単に素敵なの!?アルプスにもほどがあるの!?いい歌だね!と声をかけてくれたおじさんがいたので、ちょっと気になってたことを聞いてみた。「あのー、この辺りの水道水って飲めますか?やっぱりペットボトルの水のほうが安全ですか?」「おいおい、ドイツではボトルの水より蛇口の水のほうが美味しいんだよ!特にこのあたりは雪解け水が流れているからね。なんたってアルプスだから!!」「ゲロカッケェ!!日本ではアルプスの水!っていってペットボトルの水が売ってますよ。」「金の無駄だ!ここなら飲み放題だぞ!ハッハッハッハ!!」めっちゃ楽しくて、なによりこの町で路上ができてるというロケーションが最高すぎて、何時間でもやりたいところなんだけど……………やっぱり今日も雨。なんでだろ、アルプスがあるからこのあたりは降りやすいのかな。それとも今がヨーロッパの梅雨時期なのか。マジで毎日毎日ずっと雨だ。おかげで今日も軒下に逃げ、また止んだら歌うという面倒くさいことを何度も繰り返す。軒下から見上げるどんよりした雲にうんざりしてくる。おかげで今日も実質1時間半くらいしか歌えなかった。あがりは86.5ユーロ。10440円。早く1日ちゃんと歌いたいなぁ。本当ならこのままこの町で1泊して町のあちこちを探検してみたいところだけど、今はそこまで時間がない。雨が激しくなってきたところで路上を終えて車に戻った。バートテルツ、いい町だったなぁ。さて、もうマジでいい加減ケンプテンまで行ってしまうぞおおおおおお!!!!このままじゃ6月中にドイツを抜けられるのかわからんわ!!走り出してしばらくしてから、ガソリンがなくなったので今回の車旅最初の給油をすることに!!さて、いくらになってしまうのか…………ガソリンスタンドは細かくチェックしていたんだけど、どうやらオーストリアからドイツに入ってリッターにつき0.3ユーロほど値上がりしている。おそらく北欧に行ったらエゲツないほど上がるはず。うー、なかなか怖いな。というわけで給油レッツゴー!!今回走った距離、726キロ。ほぼメーターゼロの状態から入ったガソリン量、43リットル。値段、57ユーロ。6800円。こんな感じです。これをもとに色んな分析をして、数字を弾きだしてみた。平均移動距離、1日250キロ。ガソリン使用量、1日18ユーロ。2100円。平均移動時速、60キロ。この調子でいくと、レンタカーを借りている85日でかかるガソリン代は1615ユーロ。レンタカー代と合わせると約40万円。つまり計算すると1日ひとり2350円がヨーロッパ車旅にかかる費用。これがホテル代と移動費を合わせた値段だ。宿の高いヨーロッパで毎日泊まることを考えたら宿代だけでこの値段を軽く超える。そこに移動費なのでまぁレンタカーのほうが比べるまでもなく安い。野宿とヒッチハイクをすれば確かに全部タダだけど、荷物を全部持って町をさまよい、同性愛者やホームレスに怯え、警察に起こされ、雨が降ってきてずぶ濡れになって………というあの過酷すぎる旅は今回はなるべくしたくない。カンちゃんもいることだし。レンタカーなら荷物の持ち運びも必要ないし、雨に怯えることもない。なにより好きなところに好きな時に行けるというのがめちゃくちゃデカい。俺は日本で10年近く車旅をしてきているので、車旅の楽しみ方は心得ているつもりだ。すっごい景色のいいところで眠れるのが車旅の醍醐味。それがこのヨーロッパでできるんだったら、最大限に利用しないともったいない。ガソリン満タンになった車を走らせ、草原の中の曲がり角を曲がっていく。太陽が沈み、薄暗くなってきた田舎道には何もなく、ただ林と一本道があるだけ。静寂の大自然。そして少しした時、林が途切れて視界が開けた。曲がりながら遠くへ続く一本道。その向こうに大きな教会がポツンと建っていた。周りには本当に何もなく、草原の中に寂しげに立ち尽くすこの教会の名前は、ヴィースの巡礼教会。有名なキリスト教の聖地だ。前回も来たんだけど、あまりにも綺麗だったからカンちゃんに見せてあげたかった。半端ない田舎にあるので交通事情が悪すぎて、何本も路線バスを乗り換えてやっとのことでたどり着いたこの教会。帰り道もバスなんかなくてトボトボとこの道を歩いてヒッチハイクしてミュンヘンに帰ったよなぁ。それが車だったら、あっさり来られた。本当車旅は自由だ。小鳥の鳴き声が聞こえる。木々の葉ずれの音。そして遠くから聞こえるのは、カウベルだった。牛の首につけているベルが、ガランゴロンガランゴロンと可愛らしく草原に流れていく。あぁ、ドイツの友達に聞いた言葉を思い出す。このカウベルの音がアルプスの原風景なんだよって。最高だな。車を止めて、カンちゃんと2人でトランクを開けて風景を眺めた。それだけで本当に贅沢な時間だ。物言わぬヴィースの教会のそばで今夜はおやすみなさい。~~~~~~~~~~~~~~~~~~マレーシアのホテルをアゴダでとってくださったかたがいました!!バクテーまた食べてみたい!!どうもありがとうございます!!素敵なご旅行になることを願っております!!